「感情の明確化」
傾聴技法のひとつに「感情の明確化」ってものがあるんですけど、説明を読んでもしっくりこなかったものの、 先日ブレイクスルーがあったので備忘録を残します。
「感情の明確化」とは何か
「感情の明確化」は1対1のカウンセリングにおいて、カウンセラーがクライエントの話を傾聴するときのテクニックのひとつですね。
CL1 「Aさんがが恐い人だという話を聞いていたけど、実際に会ってみるといい人で良かったです。」
CO1 「Aさんに会うことに不安があったけど、実際はいい人で安心したんですね。」
という感じで、クライエントの感情にフォーカスして言い換えて伝え返すテクニックです。
これは、カウンセラーがクライエントの立場に立った時に感じたこと/感じるであろうことの発信で、カウンセラーの理解をクライエントの感情とすり合わせる高価を期待できます。 クライエントが「そうなんです」となるなら、カウンセラーの理解がクライエントの感情と乖離していないことが確認できますし、 クライエントが「いえ、安心したのではなくて...」となるなら、それはそれでクライエント理解のための貴重な情報になるわけです。
「感情の明確化」の問題点
「感情の明確化」はクライエント理解の点で非常に有効に働くわけですが、ぼちぼちリスクのある手法でもあります。
CL1 「Aさんがが恐い人だという話を聞いていたけど、実際に会ってみるといい人で良かったです。」
CO1 「Aさんに会うことに不安があったけど、実際はいい人で安心したんですね。」
この例でクライエントは(安心とはちょっと違う気がするけど、安心といえば安心かな)と思って、 より適した感情表現があるにもかかわらず、カウンセラー側の表現に引っ張られてしまうことがあります。
あるいは、クライエントの精神力が消耗した状態や、カウンセラーに対して良い受け答えをしなければいけないという性質を持つ場合、 (安心ではないけど、ここは話を合わせておこう)という考えから誤った解釈を受け入れてしまい、 結果として誤ったクライエント理解や関係の悪化に向かうことがあります。
こういう失敗はクライエントの表情変化などの非言語情報などから失敗したことを検知しないといけないので、 カウンセラーとしては避けたい事態ではあります。
ゆうて修正できるだけの関係が構築できているならば、あえてリスクを意識する必要はないと思いますけどね。
「感情の明確化」以外の選択肢
上記のリスクがあるため、カウンセラーが共感的な理解ができるほどクライエントとの関係が構築できてない場合などでは、 「感情の明確化」以外にも取りうる選択肢があります。
感情の伝え返し
CL1 「Aさんがが恐い人だという話を聞いていたけど、実際に会ってみるといい人で良かったです。」
CO1 「いい人で良かったですね。」
これはクライエントが「良かった」と言っているため、ほとんどのケースでそれがクライエントの感情と乖離することはありません。 クライエントは話を聞いてもらえているという認識ができるため、関係構築の無難な手段として優秀です。
しかし、「良かった」という表現は非常に漠然とした表現で、クライエント理解には繋がりにくいため、 カウンセリング初回などの関係構築のための手段と捉えるのが良いかなと考えています。
質問
僕はクライエント理解のために「感情の明確化」よりも質問を好んで使っていました。
CL1 「Aさんがが恐い人だという話を聞いていたけど、実際に会ってみるといい人で良かったです。」
CO1 「良かったというのは具体的にはどのような気持ちでしたか?」
質問は関係構築よりもクライエント理解のための方法だと解釈しています。
質問は共感を示すことには繋がらず、むしろ「あなたのことがわからない」と言外に伝えていることになるので、 ときには無機質な印象を与えてしまうかもしれませんね。
いかにして鍛えるか
僕個人は、「感情の明確化」を苦手としていますが、使えるところで使えると効果的な技法であることがよくわかったので、上手く扱えるようになりたいところです。
自身が感じたことをそのまま表現することに躊躇がありまして、普段から自分の感情を表出する経験が少ないんですよ。
そのため、咄嗟の語彙力が足りないというか脳味噌に辞書が張られていないんですね。
で、これを鍛えるためには普段から感情を言語化する必要があるんだと認識しています。
僕は実は人間ですので、感情が湧き上がることはあるんですけど、それを明文化する機会というのはまず少ないです。
メタ認知の観点から、感情の言語化はメンタルヘルスにも寄与するので、積極的に鍛えていきたいところです。