コミュニケーションスキル「傾聴」を知る
傾聴はカウンセリングやコーチングで使われるコミュニケーション技術ですが、
様々な場面で役に立つことがあるので、知っておくのがおススメです。
傾聴は個人的、内面的、精神的な問題を解決するための手法ですが、
これらの問題は他の問題と密に結びついているものですので、直接的に個人の問題を解決する立場に無いとしても傾聴は役に立ちます。
ここではカウンセリングで用いられる傾聴の具体的技法を紹介します。
傾聴とは
傾聴はカウンセリングやコーチングで使われるコミュニケーション技法です。
1対1の同期コミュニケーションにおいて、相手の話を聴く技法になります。話させる技術と言い換えても良いかもしれませんね。
相手のことを知る、特に相手の内面を知ることが傾聴の目的となります。
個人的、内面的、精神的な問題を解決するための第一歩として、問題を整理するわけですが、このために傾聴は必須の技術となります。 信頼関係を築くこともできるでしょう。
具体的技法
傾聴は、相手に「話させる」ことが大切です。
そのためには、自分本位ではなく、相手の話していることにフォーカスして聴くことが求められます。
そのための技法をいくつか紹介します。
環境づくり
傾聴は話す前から始まります。
話し手が話しやすい環境を作ります。基本は話の内容が外に聞かれることが無いような環境を作り、内容を漏らさないことを相手に伝えます。基本的に録音等はNGです。
しかし、完全に無音な閉鎖された環境ではなく少しの雑音があって開けていた方が、話し手に安心感を与えられるかもしれませんね。
いずれにせよ、話し手に希望があればそれに合わせるのがベストですね。
また、対面ならば物理的に向き合う位置にも気を配るべきです。信頼関係が構築できていない場合、正面で向き合うのは避けて角度を付けるなど工夫しましょう。
しぐさ
コミュニケーションの技法としては、相手の方をじっと見ることが良いとされることがありますが、場合によってはプレッシャーを感じさせるので、これは避けた方が無難です。
表情にも留意する必要があります。穏やかで自然な表情が基本ですが、 話の内容によっては顔をしかめたりすることも必要になります。 これが相手の話の内容に共感して自然に出るとベストですね。
そして何より、話し手のしぐさなどの非言語情報を注意深く観察する必要があります。
暗く沈んだ表情、興奮して矢継ぎ早に言葉を発する、やたらと間が多いなど、そこに込められた意味や感情は話し手を理解する上で重要な手がかりになります。
あいづち
あいづちは話し手に対して、聞き手がちゃんと聴いていることを表現するためのアクションです。
聞き手が話し手の方を向いているならうなずきで十分伝わるかもしれませんが、そうでなければ(特に対面していない場合など)発音は必須です。
内容の繰り返し
相手が話したことを直接そのまま繰り返します。
これによって相手が何を話したかを理解し、自然と内容が整理されたり、話し手が冷静になったりします。
もちろん、話をちゃんと聞いているという表現にもなります。
特に話し手が独特と言葉回しをしている場合で聞き手が違和感を感じたときなどは、積極的に言葉を繰り返すと、
別の言葉へ言い換えたり、内容の説明をしてくれたりして、話し手と聞き手の両方の理解が深まっていきます。
また、話し手が感情を発したときは積極的に感情を繰り返します。 これによって、共感を示したり、聞き手が感情を正確に理解しているか確認することができます。
質問
傾聴の取り組みの中では適宜質問をします。
- 話し手のことを理解する上で必要な情報を得るために、話しの中でわからないことを尋ねる質問
- 聞き手が気付いていることで、話し手が気付いていないことがある場合に気づきを促す質問
「はい」か「いいえ」で答えられるようなクローズドな質問よりは、オープンな質問の方が望ましいです。
クローズドな質問は多用すると尋問的だったり誘導的になりやすいので、ピンポイントで回答を得たい場面に限って使用すべきです。
個人的によくする質問は、クローズドなら「話の中で〇〇と××がありましたが、どちらがより重要ですか」、 オープンな質問では「~が~だったとしたらどう思いますか」などです。
いずれにせよ、聞き手の興味関心ではなく、話し手のための質問であることが重要です。
要約
話が長くなってくると、話の内容を一旦要約するという作業が必要になります。
これは特に話し手の思考の整理に役立ちます。話し手が一気に話をするタイプだと覚えておくのが大変だったりしますが。
NG行動
傾聴の取り組みの中で特に信頼関係が十分に構築されていないうちは
- 批判
- 助言
- 解釈
をするべきではありません。
特に批判は相手がそれ以上話してくれなくなりますから、ダメです。
おわりに
傾聴は相手を知ろうとするアプローチです。
相手を知ろうとする心構えがあれば自然に実践できるものですし、逆に技法だけでは傾聴の技法は極めることができないでしょう。
多くの人が相手を知ろうとする心構えを持てればいいなあと思う次第でございます。
おまけ
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第2章 メンタリングの技術 として傾聴技法にがっつりページが割かれています。